乙武洋匡(おとたけ ひろただ)

1998年、大学3年生のとき、『五体不満足』が出版されました。500万部を超すベストセラーとなるなど、想像もしていませんでした。その頃から「障害者の代表」と見られることに違和感を覚えるようになり、「福祉」とは意図的に距離を置き、「障害者の立場から」発言することは控えるようになりました。
あれから15年。大学卒業後はスポーツライターや小学校教師など、様々な活動を行ってきました。それらの経験から実感したのは、やはり「多様性」の大切さです。マイノリティであることで肩身の狭い思いをしている人が、まだまだこの社会には多く存在しています。そうした人々のために、少しでも尽力していきたい――そんな思いに至ったのです。
しかし、自分が通ってきた道しか知らない私には、社会的な見地から語れるような事柄が決して多くありません。自身の経験から語ることも大事ですが、他の障害や生きづらさを抱えている方についても謙虚に学ぶ必要性を感じています。
そんな思いから、今回、「株式会社バリアフリーカンパニー」プロジェクト・フェローとして活動させていただくこととなりました。誰もが安全で快適に過ごせる社会の実現に向けて、ハード(施設・商品など)・ソフト(サービス、人材など)の両面から提言を行ってきた同社のメンバーとして活動することで、私自身の学びを深めていくとともに、そこで学んだことを広く発信していくことが私の責務と考えております。
一人ひとりが胸を張って生きていくことのできる社会の実現に向けて、微力ながら尽力してまいりたいと思います。
作家
乙武洋匡
PROFILE
乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)
作家
1976年生まれ、東京都出身。
早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員など歴任。現在は『AbemaPrime』でMCを務める。昨年11月に、義足プロジェクトの全容を描いた『四肢奮迅』(講談社)が発売。